女性は、更年期を迎えると、ホットフラッシュ、寝汗、気分の変化、体重増加など、心身にさまざまな不調があらわれるようになります1。
そして、睡眠障害はそれら不調の中でも高頻度でみられる症状の一つです。
閉経後の女性は、一般的に睡眠に対する満足度が低くなります。
閉経を迎える前、約12%の女性が睡眠の問題を訴え、40代後半から50代前半になると、この数字は閉経前の女性のほぼ4倍にまで上昇します2。
また、更年期以降の女性の最大60%が睡眠障害を抱えているという調査結果もあります3。
では、なぜ閉経後の女性は睡眠が浅くなるのでしょうか。
これは、女性ホルモンの影響によるものです。
女性の卵巣がエストロゲンとプロゲステロンを作らなくなると、更年期障害が起こります。この2つのホルモンは、私たちの睡眠に直接影響を及ぼします。
例えば、最近の研究では、プロゲステロンレベルの低下が睡眠時無呼吸症候群の一因となることが示唆されています。上気道の弛緩を妨げ、閉塞性睡眠時無呼吸症候群に見られるような呼吸の停止を引き起こすようです4。
一方、エストロゲンは、私たちの気分や睡眠・覚醒のサイクルに影響を与えることがあります。また、夜間は体温を低く保ち、それが質のよい睡眠へとつながります5。
ここで覚えておきたいのは、更年期だからといって、必ず睡眠不足に陥る、というわけではありません。よりよい睡眠を得るための対策を続けていくことが大切です。
その前に、更年期が睡眠に与える影響について、もう少し掘り下げてみましょう。
ホットフラッシュ、不眠、閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、閉経後の女性が経験する最も一般的な睡眠問題です。
ホットフラッシュとは、体温が急激に上昇し、顔にカーッと熱さを感じるものです。
このように女性は、体温の上昇とアドレナリンの増加により、目が覚めてしまったり、なかなか寝付けなかったりすることがあります。
女性は残念なことに、元々不眠症になる確率が4人に1人(何らかの症状を経験)と、男性の約2倍です。
そしてさらに悪いことに、更年期になると不眠症のリスクがもっと高まり、閉経後の女性の61%が不眠症の症状を訴えています6 。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、女性の約2%に見られるという研究結果があります7 。
閉経を迎えると、そのリスクは毎年4%ずつ増加します8 。
睡眠時無呼吸症候群は、呼吸の乱れにより、日中の強い眠気や集中力・記憶力の低下など、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。
医師の診察を受ける前に、以下のチェックリストを確認してみましょう。
問題があるかどうかの目安にすることができます。
それ以外にわかりやすい指標は、パートナーからの「いびきをかいている」「寝ているときに呼吸が乱れている」などの指摘かもしれません。
そのような場合は、一度 睡眠セルフチェック を受けてみてください。
いびきをかく人すべてが睡眠時無呼吸ではありませんし、睡眠時無呼吸の人すべてがいびきをかくわけでもありません。ですが、いびきをかく人や上記のような症状がある人は、一度調べてみると安心につながります。
更年期障害が睡眠に影響している場合、出ている症状を最小限に抑えるための治療法があります。
ホルモン補充療法は、更年期障害の最も一般的な治療法のひとつで、ほてりや不眠などの症状を緩和する効果があることが証明されています9。
しかし、リスクも伴いますので、自分に合った方法を主治医に相談することが大切です。
以下の3つの基本的な睡眠習慣を守ることも、睡眠の改善に役立ちます。
多くの女性にとって、更年期の時期は、ホルモンの低下による多くの不快感や副作用をもたらします。そして、睡眠への影響はつらい症状のひとつです。
けれども、睡眠改善に取り組むことで、少しずつ、満足のいく睡眠がとれるようになるでしょう。