質の高い睡眠を取り戻すための治療を始める前に、睡眠時無呼吸症候群をよく理解するようにしましょう。そうすることで治療に前向きになり、心の準備ができていきます。
その上で治療に取り組めば、その効果を享受し、明るく元気な自分を取り戻し始めるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群を抱えている、というと少し大変なイメージかもしれません。
でも、落ち込むことはありません。自分の健康や日々の楽しみに影響を与えているものが何かを知れば、うまく対処できますよね!
まずは定義の説明です。睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に自然な呼吸パターンが一過性に停止したり、夜間通して断続的に乱される睡眠障害です。
いくつかの種類がありますが、最も一般的なのは「閉塞性睡眠時無呼吸」と呼ばれるものです。これは、眠っている間に上気道を制御している喉の筋肉が過度に弛緩することで起こります。
このとき上気道は狭くなるため、呼吸が浅くなり、いびきをかいたりすることがあります。さらに気道が狭くなると完全に閉塞してしまうこともあります。そうなると一時的に呼吸が止まり、血中酸素濃度が低下します。
これを感知した脳が、気道を確保し、正常な呼吸に戻すために、咳込んだり、鼻から強く息を吸ったりするよう指令を出すため、睡眠が妨げられます。大抵の場合はそれで完全に目が覚めることはなく、翌朝になって覚えていることもありません。
たまにこうした症状が起こるだけなら、それほど問題ではないのですが、睡眠時無呼吸症候群の人の場合、一晩で数百回も起こっていることがあるのです!
このような睡眠パターンの乱れが続き、酸素の供給が繰り返し制限されると、毎晩の睡眠の質が低下する恐れがあります。これによって体を壊し、放っておくと合併症を引き起こすリスクにさらされることになります。
睡眠時無呼吸症候群の原因は、一般的に次のようなものと考えられています。
ただし、個人によって事情が異なることに留意して下さい。
呼吸が制限されているため、夜間に目が覚めていたとしても、覚えていることはほとんどないと思います。代わりに、パートナーや友人がいびきや息の詰まりを聞き、その兆候に気付くかもしれません。また、次のような症状が複数現れることもあります。
これらの症状はたまにあるだけでも十分不快ですが、定期的に起きている場合は睡眠時無呼吸症候群のサインの可能性があります。
睡眠は心身の健康を維持するために重要な役割を担っています。
睡眠時無呼吸症候群によって夜間にたびたび呼吸が乱れている場合、健康的な睡眠時間を確保できていない可能性があります。これが原因で、生活の質や仕事、人間関係にまでも影響を及ぼすことがあります。
しかし、このように一般的な影響だけでなく、睡眠時無呼吸症候群にはもっと深刻な健康上の懸念もあります。酸素が不足し、長期にわたって体に負担がかかると、大きな影響が出てくる恐れがあるのです。睡眠時無呼吸症候群に関連するリスクとして、高血圧、肥満、脳卒中、心臓発作、2型糖尿病、さらには自動車事故の可能性が高まる、などが挙げられます。
幸いにも、治療によって日常生活に影響を与える症状を抑え、より深刻な問題を引き起こすリスクを軽減することができます。
何らかの症状や懸念事項があり、睡眠時無呼吸症候群かもしれないという場合には、御自身の判断で、医師に相談されてもよいかもしれません。
まずは簡単な 睡眠セルフチェック を受け、その可能性があるかどうかを確認しましょう。睡眠時無呼吸症候群の可能性がある場合、自宅で睡眠検査を行うか、専門医の元で適切な検査を受ける必要があります。
睡眠時無呼吸症候群の症状を緩和し、健全な睡眠を取り戻すための治療法
気道陽圧(PAP)療法は、睡眠中にマスクを通して空気を送り込みます。PAP2は数種類あります。
CPAP(持続的自動気道陽圧法)の装置は、睡眠中にポンプからチューブを通して継続的に空気をマスクに送り込み、気道を確保します。これによって、呼吸を正常に戻そうと覚醒を繰り返す必要がなくなり、より安らかな眠りが得られます。
CPAPは効果的で非侵襲的な治療法であり、良好な結果が得られるため、人気のある治療法です。
自動気道陽圧法(APAP)の装置はCPAPの装置と同じように機能しますが、個人のニーズに応じて一晩中自動で空気圧を調整できるため、それぞれの人に合わせた治療を提供できます。
歯科医師に、下顎を前に出した状態で固定し、舌の後ろにスペースを確保する専用マウスピースを作ってもらうことができます。この器具により、上気道を確保し、狭窄しないようにすることができます。このタイプの治療法は、CPAPを受けられない軽度および中等度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の方に有効であることが証明されています。
CPAPや下顎療法がうまく行かなかった場合、より侵襲的な方法である外科手術を行うことがあります。
睡眠時無呼吸症候群の原因となりうる喫煙や飲酒をやめたり、肥満を改善したりすると、治療効果を高めることができるといわれています。
例えば、軽度の睡眠時無呼吸症候群の患者さんの場合、減量して首の周りの脂肪が落ちることで呼吸の乱れが改善し、症状が緩和されることがあります。
CPAPに慣れるには個人差があります。すぐに治療に慣れる方もいれば、慣れるまで少し時間がかかる方もいます。
ここでは入眠時にCPAPのマスクや装置に慣れるための重要なポイントをいくつかご紹介します。
目指したいのは、治療は毎晩行う、健康習慣の一つになることです。CPAP療法は、装置を使用しなければ効果はありません。
日中起きているときに短時間装置を使用してみて下さい。まずはテレビを見ながら、または本を読みながらマスクを着けてみることをお勧めします1。
自分専用のCPAP装置は、すでにその人に合わせて設定されているはずですが、マスクの微妙な調整が必要な場合があります。
治療に関する問題の多くは、マスクが正しく装着できていない場合に起こります。マスクの着け心地が悪いとうまく寝付けないこともあります。
マスクの密閉性や装着感を高めるための調整は日中でも行えます。まず、マスクを装着して鏡の前に立つか座るかして、違和感のある部分や着け心地を調整します。
次に、マスクをCPAPチューブに接続し、横になった状態で装置の電源を入れます。横になると顔の輪郭が変わるので、これは空気の漏れや装着感を確認するためのとても重要なステップです。
それでもマスクの着け心地が悪い場合は、かかりつけの医師に相談してください。
睡眠衛生を改善することは、治療の効果をより高めるための重要なステップです。
CPAP療法を始める前に、良好な睡眠衛生を保つよう心掛けて下さい。これはどういう意味かというと、熟睡できるように日ごろから自分のライフスタイルや睡眠習慣を確認しておくということです。
ベッドに移動し、マスクを装着したら、装置を起動します。眠りに入るときに装置の空気圧が高すぎると感じたら、「ランプ」モードの使用をお勧めします。
ランプモードは低い圧からスタートし、時間をかけてゆっくりと空気圧を上昇させます。そのため、空気圧が所定のレベルに達する前に眠りに就くことが期待できます。
また、入眠検知機能が搭載されている場合には、その機能をオンにすることで、低圧からスタートし、眠りに就いたことを検知するまで、所定の圧力に上昇させないようにすることもできます。
ほとんどの人は、CPAP装置とマスクを快適に使えるようになるまで、ある程度時間がかかります。焦らず、気長に取り組みましょう。明るい日々を取り戻し、より健康で幸せな毎日を過ごすために、上記のポイントを実践してみて下さい。きっと治療の成功につながることでしょう。