ポイント:
- 睡眠時無呼吸と心房細動(Atrial Fibrillation: AF )との間に関連性があることが研究で報告されています。この関連性の背景となるメカニズムについては、現在も研究が続けられています²。
- 睡眠中の呼吸の中断は酸素飽和度の低下や心臓への負担を引き起こし、時間の経過とともに不整脈や動悸につながる可能性があると考えられています¹⁹ ²⁰。
- 治療、生活習慣の改善、そして定期的な医師による診察を通じて、睡眠時無呼吸と心臓の健康の両方を合わせて管理することで、より良い睡眠と長期的な心臓の健康を支えることができると考えられています⁴ ¹⁶ ¹⁷ ²²。
- 持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure, CPAP)は、睡眠時無呼吸症候群の一型である閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea, OSA)と診断された方に適用される治療法です。OSAの管理のための確立された治療法であり、OSAとAFibの両方がある患者における心血管関連のアウトカムについて検討した研究もありますが、CPAP自体はAFibの治療法ではありません⁴ ²¹。
睡眠時無呼吸症候群は睡眠に影響を与えるだけでなく、心臓にも影響を及ぼす可能性があることをご存知でしょうか。一部の方にとっては、睡眠時無呼吸症候群が動悸(不整脈)や心房細動(AFib)といった心臓の問題につながることがあるとされています¹。ここでは、睡眠時無呼吸症候群と心臓とのつながり、そして睡眠時無呼吸症候群の治療がより良い心臓の健康を支える役割を果たす可能性についてご紹介します。
睡眠時無呼吸症候群と心房細動との関係
研究では、睡眠時無呼吸症候群とAFibの間に強いつながりがあることが示唆されています。これらのいずれかの状態があることで、他方を発症するリスクが高まる可能性があると考えられています²。両方の状態がある場合、全身の炎症や損傷といった健康上のさらなる課題に直面する可能性が高くなることがあるとされています²³。
睡眠時無呼吸症候群とは何でしょうか?
睡眠時無呼吸症候群は、夜間を通じて呼吸が何度も停止し、再開する状態です。これらの中断により、身体が十分な酸素を得ることが難しくなることがあると考えられています²⁴。
睡眠時無呼吸症候群のある方には、次のようなことがみられる可能性があるとされています²⁵ ³⁶:
- 日中の過度の眠気
- 朝の頭痛
- イライラや気分の変動
- 集中力の低下、日中ぼんやりしている感覚
- 睡眠中のいびきや息切れ
睡眠時無呼吸症候群には主に2つのタイプがあります:閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea, OSA)と中枢性睡眠時無呼吸(Central Sleep Apnea, CSA)です。より一般的なOSAは、睡眠中にのどが弛緩し、気道が狭くなることで起こるとされています²⁴。これにより肺への気流が制限され、呼吸を再開するために一時的に目を覚ますことにつながると考えられています。これは夜間に何度も起こることがあり、回復的な睡眠を妨げる可能性があるとされています²⁵。
CSAは、呼吸を制御する筋肉が適切に機能しない場合に起こるとされています。OSAと同様に、CSAのある方は睡眠中に繰り返し呼吸が停止することがあります 。しかし、気道の閉塞ではなく、脳と呼吸筋の間の伝達の不足に問題の根本があるとされています²⁴。CSAのある方は夜間に何度も目を覚ますことがあり、睡眠が分断されることにつながると考えられています²⁶。
心房細動とは何でしょうか?
心房細動(AFib)とも呼ばれる心房細動は、不整脈を指します。通常の場合、心臓は規則正しいリズムで収縮と弛緩を繰り返します。AFibのある方では、心臓の上部の部屋(心房) が不規則に拍動します。AFibにより、血液が体全体にスムーズに送り出されるべきところが、心臓の中に溜まることがあるとされています。この状態は、心房内での血栓形成を促し、脳卒中や塞栓症、心不全などの重篤な合併症につながる可能性があると考えられています。
研究から示唆されていること
睡眠時無呼吸症候群とAFibは異なる状態ですが、互いに影響を及ぼし、悪化させることがあるとされています。研究では、睡眠時無呼吸症候群のある方は、一般の人々と比べてAFibを有する可能性が最大で4倍高いことが示唆されています。これは、年齢や体格、他の心疾患関連の状態の有無を考慮しても成り立つとされています²⁷。同様に、AFibのある方のほぼ半数がOSAも併せ持っているとされています¹。一部の研究者は、OSAがAFibを引き起こし、AFibがOSAの発症に関与する可能性があると考えています²。
OSAとAFibはいくつかの共通のリスク因子を共有しています:
- 年齢。加齢により血管が硬くなり、気道の筋肉の緊張が低下するとされています²⁸ ³⁰。これにより不整脈のリスクが高まり、睡眠中の上部気道の虚脱につながると考えられています²⁹ ³⁰。
- 過剰な体脂肪。首や上部気道周囲の過剰な脂肪は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea, OSA)に関連する閉塞のリスクを高めるとされています³¹。高血圧や心肥大を引き起こすことでAFibに関与すると考えられています。これにより、心臓の伸展や瘢痕化につながる可能性があるとされています³²。
- 性別。どちらの状態も男性に多くみられるとされています³³。
OSAとAFibはしばしば同時にみられますが、研究では、中枢性睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea, CSA)は心不全やAFibのある方により多くみられるとされています⁶ ¹⁵。心不全により心臓のポンプ機能が低下し、体液の貯留につながると考えられています。この体液は血液ガスに影響を与え、脳による呼吸の調節に影響を及ぼす可能性があるとされています¹⁵ ²⁶。睡眠中に 繰り返される呼吸停止は、酸素と二酸化炭素のレベルの変化を引き起こし、心臓に負担をかけ、AFibに関与する可能性があると考えられています⁶。研究では、心不全の男性の最大37%にCSAがみられることが観察されています¹⁵。
睡眠時無呼吸症候群が心臓に与える影響
睡眠時無呼吸症候群は、治療を行わないままでいると心臓に負担をかけることがあるとされています。この状態は夜間の酸素飽和度の低下につながり、身体に負担をかけ、炎症を引き起こす可能性があると考えられています⁶ ²⁰。分断された睡眠は神経系に悪影響を及ぼし、ストレスを高めることがあり、これは高血圧や心疾患のリスク因子であるとされています¹⁹。
睡眠時無呼吸症候群による呼吸停止は、胸腔内の圧力変化を引き起こし、心臓に大きな負担をかけることがあるとされています¹⁴。時間の経過とともに、OSAは心臓の上部の部屋(心房 の構造的変化を引き起こす可能性があり、肥大、伸展、瘢痕組織の形成が含まれると考えられています²。
睡眠時無呼吸症候群はAFibや他の不整脈の問題と関連しているとされていますが、多くの因子が関与している可能性があります。不整脈や動悸(胸で感じる顕著な心臓のドキドキ)がある場合は、医師に相談することをお勧めします¹³。
炎症の役割
OSAと心房細動(AFib)のある方では、体内の炎症のレベルがより高いことが一般的であるとされています²³。炎症は本来、けがや感染から体を守るための正常な生体反応ですが、健康な組織で生じたり、長期間続いたりすると、身体に悪影響を及ぼす可能性があると考えられています10(*10は脚注)10。
睡眠時無呼吸症候群に一般に関連する状態である高血圧などは、心血管系におけるプラークの蓄積にも関与するとされています⁹。プラークが蓄積している部位に身体が免疫細胞を送ることで、炎症が引き起こされる可能性があるとされています⁹。炎症は心臓の電気系統や構造を変化させ、不整脈のリスクを高めることがあると考えられています⁸。
診断と治療において意味すること
睡眠時無呼吸症候群と心臓の問題のある方にとって、早期の診断と治療は、より良い健康を支え、生活の質を維持し、将来の合併症のリスクを減らす助けとなる重要なステップであるとされています。
診断を受ける方法
睡眠時無呼吸症候群の可能性があるかどうかを判断するために、医師はスコアリングシステムやチェックリストを使用します。これらのツールは、次のような要因を考慮するとされています⁷:
- 年齢
- 体格
- 症状
- 病歴
これらのツールだけでは睡眠時無呼吸症候群の診断には不十分ですが、医師がさらなる検査が必要な方を判断する助けになることがあります。例えば、AFibと診断された方を対象とした研究では、スコアリングツールがOSAのスクリーニングに有用であることが示されています¹¹。
朝の頭痛や日中の眠気といった症状は睡眠時無呼吸症候群の兆候であることがあるとされています²⁵が、診断を提供し最適な治療選択を示すことができるのは医師だけです。多くの場合、医師は睡眠検査を通じて睡眠時無呼吸症候群を確定するとされています⁵。これは在宅睡眠時無呼吸検査(Home Sleep Apnea Test, HSAT)簡易モニターによる検査 を通じて行われることがあり、ご自宅等で 行うことができると考えられています⁵¹。ただし、AFibなど他の病状と診断されている場合は、訓練を受けた検査技師が睡眠をモニタリングできる睡眠検査室での終夜睡眠ポリグラフ検査(Polysomnography, PSG)を行う ことがあるとされています⁵¹。
睡眠検査で使用される機器は、医師が指示する検査の種類によって異なります。鼻の呼吸センサー、血中の酸素量を測るパルスオキシメーター、いびきを測るマイク が含まれることがあります。ただし、心房細動(AFib)などの疾患と診断されている場合には、医師が睡眠検査施設での終夜睡眠検査が行われることがあります。この検査では、専門の技師が睡眠中の状態をモニタリングします25。
治療の選択肢
睡眠時無呼吸症候群と心房細動(AF)は、適切な診断と管理が重要となります。 幸いなことに、治療の選択肢があります。持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure, CPAP)は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea, OSA)に対して推奨される治療とされることが多く、一部のタイプの中枢性睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea, CSA)にも役立つ可能性があるとされています¹² ⁴⁹。この療法はCPAP装置に頼るもので、チューブ と、鼻や口、あるいはその両方に合わせるマスクを通じて持続的に陽圧を送る機器です。 この気流は、OSAのある方の睡眠中の気道の虚脱を防ぐとされています²¹。
CSAのある方にとって、CPAP療法は呼吸停止を減らし、睡眠中の自然な呼吸リズムを促す助けになる可能性があるとされています¹²。適応補助換気 (Adaptive Servo-Ventilation, ASV)*機器はCSAに対する別の治療選択肢となることがありますが、使用はより限定的であるとされています⁵⁰。CPAPと同様に、ASV療法は、睡眠中の呼吸状態に合わせて空気圧を自動的に調整し、呼吸をサポートする治療法です。CPAPが一定の圧力を維持するのに対し、ASVは個々の呼吸パターンに応じて圧力サポートを調整するとされています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)のある方にとって、継続的なCPAPの使用は重要であるとされています⁴⁸。CPAPに慣れるまでには時間がかかることがありますが、機器に慣れる助けとなる工夫がいくつかあります。次のようなものがあります:
- 最初の夜は数時間だけCPAP装置を使用し、その後使用時間を徐々に延ばす。
- 感覚に慣れるために、毎日数分間CPAPマスクを着用する。
- 継続的な使用を促すために、モバイル機器でリマインダーを設定する。
- 課題や副作用について話し合うため、定期的に医師の診察を受ける。
CPAP療法はOSA治療の標準とされていますが⁴⁹、快適な睡眠と途切れない呼吸を促す他の選択肢もあります。これには口腔内装置(下顎前方移動装置など)、睡眠姿勢の変更、または手術が含まれることがあるとされています⁴⁶ ⁴⁷。
AFibの治療には多くの場合、薬物療法と生活習慣の改善が含まれるとされています⁴⁵。一部のケースでは、医師が外科的および非外科的アプローチを勧めることがあるとされています⁴⁴。治療の一環として、心臓に短時間の電気刺激を与え、乱れた心拍リズムを正常なリズムへ戻すことを目的とした「電気的除細動(カルディオバージョン)」が行われる場合があります。 ⁴⁴。他のケースでは、ペースメーカーが治療選択肢となることがあるとされています⁴³。ペースメーカーは、一定の心拍数に 調節する助けとなる埋め込み式の電子機器であるとされています⁴³。これらの治療はAFibの管理と症状のコントロールに役立つとされています。
CPAP療法のメリット
OSAのある方にとって、持続陽圧呼吸療法(CPAP)は睡眠中に気道を開いた状態に保つ助けとなるよう設計されています²¹。この療法は心房細動(AFib)の治療ではありませんが、研究ではAFibの治療を受けた方の正常な心リズムの維持を助ける可能性があることが示唆されています。実際、ある分析では、CPAPの使用とOSAのある方におけるAFibの再発との関連について検討した研究があります⁴。
さらに、定期的なCPAPの使用は、睡眠の質の改善や生活の質の向上を助ける可能性があるとされています。毎晩少なくとも6時間CPAPを使用するOSAのある方の多くは、日中の眠気の軽減や記憶力の改善を報告しているとされています¹⁶ ⁴²。
CPAP療法はAFibを直接治療するものではありませんが、心臓や循環器系の健康全般を支えることで睡眠時無呼吸症候群の症状の管理を助けることができるとされています。また、OSAが適切に管理されている場合、治療後にAFibが再発する可能性が低くなることがあると考えられています¹⁷。
より幅広い管理
睡眠時無呼吸症候群とAFibは、個人のリスク因子や症状が多様な複雑な状態です。長期的な管理に向けた最良の戦略は、心臓の健康を支える治療計画について医師に相談することであるとされています。両方の状態がある場合、診療チームには心臓の専門医と睡眠の専門医の両方が含まれ、連携してケアをサポートすることがあると考えられています。
どのような治療法を選択する場合でも、生活習慣の改善は健康維持や症状の管理をサポートする上で重要とされています。 体重の管理、継続的な運動プログラムの取り入れ、アルコール消費の制限は、心臓の健康と睡眠の質に良い影響を与える可能性があると考えられています。糖尿病や高血圧といった他の病状の管理は、さらに健康を支えることがあるとされています²² ⁴¹。
今後に向けての計画
質の高い治療計画に最先端の研究と技術が組み合わさることで、心房細動(AFib)と睡眠時無呼吸症候群のある方の生活の質の向上を支える可能性があるとされています²²。ウェアラブル技術から個別化された治療まで、これらの慢性の健康状態がどのように特定され、管理されるかの変化は、ご自身のケアにより積極的な役割を果たすことを後押しする可能性があると考えられています。
成功する治療計画から期待できること
OSAとAFibの両方のある方にとって、 OSAの適切な管理は、心血管疾患を併せ持つ方の全体的なケアの一部となることがあります。
研究によると、持続陽圧呼吸療法(CPAP)は日中の眠気や夜間の睡眠の質の低下など、OSAの症状を改善するとされ、生活の質に良い影響を与える可能性があるとされています³⁹。また、。 CPAPの使用により、AFの発作頻度と関連する可能性が示唆されています1⁸。
新しい研究とイノベーション
睡眠時無呼吸症候群と心疾患のある方には、早期の診断と治療が推奨されています。いずれの状態も治療を行わないままでいると、長期的な健康上の合併症につながる可能性があるとされています。幸いなことに、リスクをより早く発見する助けとなる新しいツールが開発されています。
さらに、研究者や医療従事者は、ひとりひとりの状態やリスク因子に応じた治療方針の検討を進めています。 一律のアプローチではなく、つまり、画一的な治療ではなく、慢性疾患のある方それぞれの健康状態やリスクに応じた治療方針を立てることが検討されます。 個別化された治療を医師が作成できると考えられています。
特別な考慮事項
睡眠時無呼吸症候群と心疾患を認識する際には、いくつか考慮すべきことがあります。例えば、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と心房細動(AFib)のある高齢の方は、脳卒中のリスクの増加など、特有の健康リスクに直面する可能性があるとされています³⁷。男性と女性では症状が異なることが多く、診断や治療のアプローチに影響することがあるとされています³⁶。さらに、アスリートはAFibを発症するリスクが高くなることがあるとされています³⁵。妊娠中の方にとっては、これらの併存する状態の慎重な管理が推奨されています。
睡眠時無呼吸症候群はAFibや他の不整脈の問題と関連しているとされていますが、多くの因子が関与している可能性があります。不整脈や動悸に気付いた場合は、医師に相談してください。
*ASV療法は、左室駆出率(LVEF≦45%)の低下を伴う慢性で症状のある心不全(NYHA II〜IV度)および中等度から重度の優位な中枢性睡眠時無呼吸のある方において、安全性リスクをもたらす臨床試験結果が報告されています³⁴。日本循環器学会の2023年ガイドラインでは、心不全が安定または改善した後であってもASVを漫然と使用すべきではないとし、Class III(Harm)に分類しています34。
この情報は教育目的のみであり、医学的アドバイスの代わりとなるものではありません。胸の痛み、めまい、失神などの突然のまたは重い症状に気付いた場合は、直ちに医療機関を受診してください。
睡眠時無呼吸症候群の症状について、さらに詳しく学びましょう。
