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呼吸について

呼吸とはなに?

呼吸の大きな目的は、生きていくために必要な酸素をからだに取りこんで、体外に二酸化炭素を出すことです。
進化の過程をたどれば、皮膚を使って呼吸していた原始的な生物が、生活が水中に移るとともに鰓(えら)を獲得し、さらに肺ができあがったことで私たちは陸に上がって生活ができるようになりました。

私たちは、毎日意識することなく息をしています。
あらためて色々な「呼吸」を知ることで、その大切さ、ありがたさを実感しましょう。

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外呼吸と内呼吸

呼吸には2種類あるといわれています。息を吸って体外から酸素を取り入れて、二酸化炭素を吐き出す呼吸を外呼吸と呼びます。

さらにからだの細胞ひとつずつが、エネルギーを作り出すために行う呼吸を内呼吸といいます。いわば細胞呼吸です。

なんだか難しい…?

いえいえ、これは実は中学校の理科で習う内容なんです。

呼吸というと外呼吸を思い浮かべると思いますが、細胞から血管に渡された酸素が組織に運ばれ、代わりに二酸化炭素を受け取る、いわゆるガス交換をして細胞自身も呼吸しています。

したがって、呼吸は息を吸って吐く、ということだけで成り立っているのではありません。個々の細胞や周囲の血管がしっかりと機能している内呼吸が大切です。

口呼吸と鼻呼吸

鼻をつまんでも口で息ができる。

口を閉じても鼻で息ができる。

どっちで息をしようが関係ない。

決してそうではありません。

鼻粘膜の働きは多様です。

特に、吸気に含まれる異物やアレルゲンを排除し、吸気の温度調節さらには湿度調節をします。

これによって気管や肺にできるだけ負担のない吸気が提供されることになります。天然の“異物除去フィルター付き加温加湿器”といえます。

鼻呼吸をしないと、この高性能を活かせていないことになります。

科学的にも口呼吸によるワーキングメモリ、読解力の低下1や鼻閉による味覚の低下2などが指摘されています。

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さらに、単に鼻づまりだけが口呼吸になる原因ではありません。
食材の変化などにより、しっかり噛む機会の減った現代の生活では、舌や下顎の筋肉の衰えもあり、自然と口が開いてしまう方が多いようです。

スマホを見ながらといった「ながら食べ」をせず、しっかりと噛んで食べるだけでも、口呼吸が減り、いびきの対策になります。

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胸式呼吸と腹式呼吸

日中、意識せずに行う呼吸は、胸のあたりが膨らむ、早くて浅い胸式呼吸です。

一方、睡眠時やリラックス時は、多くの場合、息を吸うときにお腹の膨らみを感じる、緩徐な腹式呼吸になっています。

腹式呼吸がよいという意見を耳にすることがありますが、実際にはどうなのでしょうか?

腹式呼吸では胸式呼吸に比べて有意に横隔膜運動が増加する、緊張・不安が低下する3,4、副交感神経が有意になる5といった報告があります。

過緊張を強いられる現代社会においては、意識してゆっくりとした腹式呼吸を行うことがストレス対策になります。

肺呼吸の必須条件

最後に、私たちが何気なく行っている肺呼吸にとっての必須条件を考えてみます。

呼吸器官における進化の過程に触れましたが、水棲動物が肺をもつようになって陸地で暮らせるようになりましたが、じつは、陸に上がってからも呼吸に重要な必須条件は「水」なのです。

酸素は水に溶けた状態でないと、血液中に広がっていきません。

肺胞には内部に薄い被膜があり、酸素がこの被膜を通して血液中に拡散していきます。
したがって、肺にとって、肺胞内部の被膜が乾燥していると、いくら酸素を吸いこんでも血液、さらには各臓器には運ばれて行かないことになります。

乾燥はお肌だけではなく、肺の大敵でもあります。

いびきをかいて、口を開けて寝ていると、翌朝のどが痛い、乾く、せき込むといった症状を感じます。
鼻を通った吸気は、鼻腔内で加温加湿されて肺へと入るため、肺をいためることはありません。

「鼻呼吸」で優しい空気を肺に送り込み、「内呼吸」で細胞の機能を高め、ゆっくりした「腹式呼吸」でリラックスする。
そんな呼吸を心がけたいものですね。

記事執筆

Dr.Kitanishi

北西 剛 (きたにし つよし) 先生

きたにし耳鼻咽喉科 院長 医学博士
日本アーユルヴェーダ学会理事長

自身自医をモットーに、西洋医学に加え、補完医療・伝統医学を組み合わせた統合医療を実践。

著書に『耳鼻咽喉科医だからわかる意外な病気、治せる病気』 『「うるうる粘膜」で寿命が延びる!』 『慢性副鼻腔炎を自分で治す(つらい鼻づまりがスッキリ!)』『図解 自力で治す!慢性副鼻腔炎 アレルギー性鼻炎』などがある。

参考引用