身近な呼吸器疾患
ぜんそく
アレルギー性鼻炎
呼吸器に関連する、代表的なアレルギー疾患としては、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎があります。
鼻炎の鼻づまりで眠れない。ぜんそくをお持ちの方は、夜間の咳で起きてしまった。
そんな経験があるかもしれません。ただし、睡眠と呼吸器アレルギー疾患は、決してそれだけの関係ではありません。
生活習慣の近代化で増えるアレルギー疾患
気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎は、3大アレルギー疾患と呼ばれます。
子供、大人いずれの年代でも、アレルギー疾患は増加の一途をたどっています。
原因は一つではありませんが、遺伝的な要因に加えて、各種大気汚染、気密性の高い居住環境、食材・建材などに含まれる化学物質、幼少期の感染症減少や過度な衛生志向などの環境要因が指摘されています。
まさに便利で清潔な生活環境と引き換えに、アレルギー疾患が増えたともいえるでしょう。
One way, One disease1
呼吸器官は、鼻腔にはじまり、口腔・咽喉頭を経て気管までつながっており、アレルギー性鼻炎は鼻腔の病気、気管支ぜんそくは気管の病気と切り離して考えるのではなく、鼻から気管支までの一つの通り道=one wayで起こる、一つの疾患=one disease ととらえる概念が重視されています。 実際に、アレルギー性鼻炎患者の約4割が気管支ぜんそくを合併し、逆に気管支ぜんそくの約8割がアレルギー性鼻炎を合併しているという報告があります。
睡眠の問題は、鼻づまり、いびき、鼻みずや痰、せきといった、まさにone wayである気道の問題でもあり、気道が快調であることが、よい睡眠にもつながります。
気管支ぜんそくの正体は?
気管支ぜんそくは、「空気の通り道(気道)に慢性的な炎症が起こり、様々な刺激に対して気道が過敏になって、発作的に気道が狭くなる症状を繰り返す病気」と説明されます。
ここで重要なことは、気管支ぜんそくの原因は “慢性的な炎症” であるという点です。
気管支ぜんそくはその昔、強いアレルギー反応が起こり、一時的に発作的に気道が狭くなる病気と考えられていましたが、現在は発作がないときにも、気道に慢性的な炎症が起こっていることが問題視されています。
したがって、普段から強い発作が起きないための予防や対策が必要です。
気管支ぜんそくの吸入薬は、気管支拡張剤、ステロイド剤が含まれるものが多くありますが、その目的は、発作時の症状緩和ではなく、日常から使用することで慢性炎症を軽減することです。
アレルギー性鼻炎も同様です。
季節性の花粉症であっても、日常的にさらされる各種抗原(ハウスダスト、ダニ、化学物質など)により、常に鼻粘膜が炎症を起こして、過敏な状態なっていると、いざ花粉が飛散する時期には、非常につよい鼻炎症状を起こすことになります。
睡眠障害によるアレルギー疾患の悪循環2
アレルギー疾患では,先にも述べたように慢性炎症が起こっていて、実際の症状としては鼻づまりや咳などによる睡眠障害をきたします。
さらに、慢性炎症や睡眠障害により体内時計が影響を受けることで、粘膜の粘液産生・防御機能の悪化、免疫細胞機能の低下などをきたし、アレルギー症状が悪化する悪循環に陥ってしまいます。
家族性アレルギー性鼻炎患者においては、睡眠に関係の深いホルモンであるメラトニンの受容体遺伝子変異も報告されています。
鼻炎と睡眠には深い関係があります。
日常のケアで大切な3つの「内なる環境」
ではアレルギー対策としては、何が適しているのでしょうか?
アレルギー疾患では3つの内なる環境、「気道内環境」「室内環境」「腸内環境」が大切です。
室内(ほこりやダニなどの対策)、腸内(腸内フローラにいい食養生)とともに、鼻やのど、気管、特に気道内粘膜の環境をいい状態に保ちましょう。
そのために、気をつけていただきたいのは鼻呼吸の習慣です。口での呼吸は、あくまでも運動など苦しい時のための呼吸です。
特に、よく噛んで食べる習慣が減り、マスク生活で、私たちは自然と口を閉じて鼻で呼吸をする機会が減っています。
いびきや睡眠時無呼吸症候群を患っている場合には、寝ている時に口呼吸になりやすく、口腔内乾燥を引き起こすことで全身的な疾患につながります。
睡眠とアレルギーは、まさに健康にとっての両輪です。
記事執筆
きたにし耳鼻咽喉科 院長 医学博士
日本アーユルヴェーダ学会理事長
自身自医をモットーに、西洋医学に加え、補完医療・伝統医学を組み合わせた統合医療を実践。
著書に『耳鼻咽喉科医だからわかる意外な病気、治せる病気』 『「うるうる粘膜」で寿命が延びる!』 『慢性副鼻腔炎を自分で治す(つらい鼻づまりがスッキリ!)』『図解 自力で治す!慢性副鼻腔炎 アレルギー性鼻炎』などがある。
参考引用
- Bousquet J, et al : Allergic rhinitis and its impact on asthma. J Allergy Clin Immunol 108(5 Suppl):S147―334, 2001.
- 日鼻誌 60 (1):101-102、2021