姿勢と睡眠の深い関係
子供のころ、勉強していると「姿勢が悪い!」「目が悪くなるよ!」と怒られたことはありませんか?
時代は進み、いまや生まれたときから、ネットやスマホが身近にある、いわゆるデジタルネイティブの世代。
スクロールしながら、スマホの小さな画面を見るには、自然と猫背になり、姿勢が悪くなるのも当然かもしれません。
最近では「姿勢が悪い!」と怒られる風景すら、見かけなくなったように感じます。
姿勢の悪さが呼吸に影響?
息を吸い込んで肺が膨らみ、息を吐いて肺が縮む。
呼吸というのは、とても単純な動きともいえます。
よく風船に例えられるように、肺は本来とても伸縮性がある臓器です。
タバコの影響などで肺が硬くなって伸縮性がなくなることは想像しやすいと思いますが、肺自体の問題以外に、もう一つ肺の伸び縮みに関係する要因があります。
それこそが「姿勢」です。
悪い姿勢は、決して目が悪くなり、肩がこるだけではありません。
姿勢が悪いと、楽な呼吸、いい呼吸を妨げ、ひいては様々な不調につながってしまいます。
いい呼吸のためには・・・
少し詳しくなりますが、肺は周囲を肋骨、肋間筋、胸骨、横隔膜に囲まれています。言い換えると、心臓や肺は、こうして厳重に守られている、大切な臓器だと思い知らされます。
いくら肺が膨らもうとしても、肺の入れ物である肋骨や肋間筋が硬くなり、横隔膜が動いていないと肺が広がるスペースがありません。
「いい呼吸は、いい姿勢から」というのもうなずけます。
あれ、これは睡眠のコラムだったのでは?と困惑していますよね?
それでは、寝ている時の姿勢を気にされたことはあるでしょうか。
どんな姿勢で寝ていますか?
ペットを飼っているとよく見る光景ですが、朝起きてすぐ、ワンちゃんは前足を前に出し、背中を沈めて、必ず伸びをします。
それだけ寝ている時は同じ姿勢をとる時間が長く、本能的にも動物たちはからだを伸ばしたくなるのでしょう。
日本人の平均睡眠時間は7時間前後といわれています1。
もし、しんどい姿勢で寝ているとすると、なんと午前9時の就業から午後4時まで、
ずっとつらい姿勢で休みをとらずに仕事をしているのと同じことになるのです。
起きているとできないことが、寝ているからできてしまう。睡眠時の姿勢の大切さが想像できますね。
「快適な睡眠はいい姿勢から」
最後に睡眠姿勢についてお話ししましょう。
そもそも、寝ている間は自分で姿勢をコントロールできません。
ただし、悪い睡眠姿勢になる理由を減らすことは可能です。
それではよい睡眠姿勢の条件とは何でしょうか?
睡眠姿勢を研究されている整形外科医によれば、
よい睡眠姿勢として
- 骨、関節、筋肉がリラックスできること
- 自在に寝返りが打てる
という2点を挙げています。
同じ姿勢で眠っていると、からだの下側になっている箇所が圧迫されて、血液の流れは悪くなります。
また仰向け姿勢が長いと、自らの舌や下あごでのどが狭くなり、いびきや睡眠時無呼吸の原因にもなります。
今でも硬い枕が好き、重たいかけ布団が好き、という方もおられますが、寝返りの打ちやすさには、寝具、特に枕の硬さや高さが重要とされています。
さっそく家に帰って、
「仰向けに寝ても横を向いても無理な力がどこにもかかっていないか」
「自然にゴロゴロと寝返りがうてるか」
を確認してみましょう。
がんばらないと寝返りがうてない枕で寝ていませんか?
いい睡眠姿勢こそ、快適な睡眠の第一歩です。
コラム執筆
北西 剛 (きたにし つよし) 先生
きたにし耳鼻咽喉科 院長 医学博士
日本アーユルヴェーダ学会理事長
自身自医をモットーに、西洋医学に加え、補完医療・伝統医学を組み合わせた統合医療を実践。
著書に『耳鼻咽喉科医だからわかる意外な病気、治せる病気』 『「うるうる粘膜」で寿命が延びる!』 『慢性副鼻腔炎を自分で治す(つらい鼻づまりがスッキリ!)』『図解 自力で治す!慢性副鼻腔炎 アレルギー性鼻炎』などがある。
人気の記事
ちゃんと寝てるはずなんだけど...
いびきが気になる、日中も眠くて活力がない…など、睡眠に関してお悩みですか? まずは簡単なセルフチェックをして、自身の睡眠について学びましょう。 また睡眠について聞いてみたいことなど、お気軽にレスメドのおはようコーチ*までご連絡ください。
睡眠セルフチェック おはようコーチに相談※「レスメドおはようコーチ」は、睡眠の健康についてのトレーニングを受けた販売・カスタマーサービス担当者です。睡眠の健康、睡眠障害、睡眠の改善に役立つ製品等、睡眠に関する一般的な情報を提供できますが、資格を持つ医療専門家ではないため、医学的なアドバイスを提供することはできません。何らかの症状や懸念事項がある場合には、ご自身のご判断で、引き続き医師にご相談されてもよいかもしれません。
参考引用
- e-ヘルスネット 厚生労働省 健やかな眠りの意義
記事を読む
温故知新の睡眠事情
自分はいつも寝不足だけど、みんなどれくらい寝ているの? 困ってはいないのかな? そんな疑問をもつ方は少なくないかもしれません。 今回のコラムでは、過去から現代にいたる、世界の睡眠事情をのぞいてみたいと
Read More »更年期の睡眠はどんなもの?
女性は、更年期を迎えると、ホットフラッシュ、寝汗、気分の変化、体重増加など、心身にさまざまな不調があらわれるようになります1。 そして、睡眠障害はそれら不調の中でも高頻度でみられる症状の一つです。 閉
Read More »睡眠の質は 加齢とともに悪くなる?
年齢を重ねると、だんだんと睡眠の質は下がってしまうもの、と思っていませんか。 満足感の高い睡眠を諦める必要はありません。年齢を重ねても、十分な睡眠をとり、健康に過ごすことは可能です。 年齢を重ねるにつ
Read More »